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長時間デスクワークが身体に与える負荷と、椅子が果たす役割

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IT化の進展やリモートワークの普及に伴い、一日あたりの座位時間は増加傾向にある。厚生労働省の調査でも、日本人の平均座位時間は世界的に見ても長い水準にあることが指摘されている。業務のデジタル化が進むほど、デスクに向かう時間は増える傾向にあり、座ることによる身体への影響を無視できない状況になりつつある。

とりわけ、プログラマー、デザイナー、事務職など、業務の大半をPC作業が占める職種では、一日8時間以上座り続けるケースも珍しくない。こうした環境において、「どのように座るか」だけでなく「何に座るか」が身体の状態に少なからず影響を与えるという認識が広がりつつある。もともと座り姿勢は立ち姿勢よりも腰へ負担がかかりやすく、長時間座ったままでいると、血流の滞りにより筋肉が硬化し、疲労が溜まりやすくなるとされている。

また、コロナ禍を経て在宅勤務が一般化したことで、通勤時間に相当する歩行や立位の時間が減少し、一日のうちで座っている時間の割合がさらに増えたという指摘もある。オフィスであれば会議室への移動やランチへの外出で自然と立ち上がる機会があるが、在宅環境ではそうした動きが減りがちであり、座位の連続時間が長くなる傾向にある。

座位による身体負荷のメカニズム

人間の脊椎は、本来S字カーブを描くことで体重を効率的に分散している。しかし、座った姿勢ではこのS字カーブが崩れやすく、特に腰椎部分に負荷が集中する傾向がある。整形外科の研究によれば、座位では立位に比べて椎間板への内圧が約1.4倍に増加するとされており、前傾姿勢を伴う座位ではさらに約1.85倍にまで上昇するという報告もある。腰椎椎間板に対する負担が大きいほど、筋肉の硬直や身体の歪みを招きやすくなる。

前傾姿勢を伴う座り方に陥る原因として、パソコンのディスプレイ位置が低いこと、椅子の高さが合っておらずかかとが浮いてしまうことなどが挙げられている。また、長時間同じ姿勢を維持することで、筋肉の血流が低下し、いわゆる「筋肉のこわばり」が生じやすくなる。肩こりや腰痛といった症状の多くは、こうした血流低下と筋肉の持続的な緊張が複合的に作用した結果であることが多い。

椅子の設計が身体負荷に与える影響

荷重分散という考え方

人間工学に基づいた椅子の設計において、「荷重分散」は中心的な概念の一つである。座面が体重を特定の部位に集中させるのではなく、臀部と太ももの広い面積で均等に受け止めることで、一箇所あたりの圧力を低減させるという考え方である。座面が木製のような硬い素材の場合、体圧が一部分に集中し、身体のゆがみや痛みを引き起こす場合がある。逆に柔らかすぎる場合は、骨盤が安定せず姿勢が崩れやすくなることもある。

座面の形状や素材、クッション性がこの荷重分散に直接的に関わっている。適切な硬さと形状のバランスが、長時間座位における快適性と負荷軽減に影響を与える。座面の形状としては、大腿部の血行を妨げない構造で、やや前方が下がった形状のものが望ましいとされている。高機能チェアでは「異硬度クッション」と呼ばれる技術が採用され、坐骨など体重がかかりやすい部分は硬めに、太もも裏など圧迫を避けたい部分は柔らかめにすることで、荷重の偏りを抑える工夫がなされている。

背もたれによる脊椎サポート

背もたれは、腰椎の自然なカーブを維持し、椎間板への過度な負荷を軽減する役割を担っている。特にランバーサポート(腰部支持)の有無や位置調整機能は、腰痛の予防において重要な要素とされている。腰痛対策としては、肩ほどまでの高さがある「ハイバック」以上の背もたれが推奨されることが多く、腰と背中全体で身体を支えることができるためである。背もたれのないスツールやベンチタイプの椅子では、すべての姿勢維持を筋力に頼ることになり、長時間の使用には向かない場合が多い。

ランバーサポートの役割は、正しい着座姿勢をサポートすることにある。腰を当てるように座ることで自然に骨盤が立ち、背骨本来のS字カーブを維持しやすくなる。腰にかかる負担や疲労の軽減につながり、長時間のデスクワークでも比較的楽に座り続けられる状態を作りやすい。近年では、使用者の体格や姿勢に応じて自動的にポジションが調節される独立式ランバーサポートを搭載したモデルも登場しており、より個人に最適化されたサポートが可能になりつつある。

動的な座り方を支える機構

近年のエルゴノミクス研究では、「正しい姿勢で固定する」よりも「姿勢を適度に変化させる」ことの方が重要であるという見解が主流になりつつある。この考え方を反映して、シンクロロッキングやフリーロッキングなど、座る人の動きに追従する機構を備えた椅子が増えている。シンクロロッキングは背もたれと座面が別々に動くため、人間の自然な動きに近い状態で座れるとされている。こうした機構は、筋肉の持続的な緊張を緩和し、血流の維持を助ける効果が期待されている。

さらに、座面が独立して前傾する機能を備えたモデルも存在する。前傾姿勢で集中して作業する際に、座面が身体の動きに追従することで腰への負荷を軽減する設計である。こうした前傾チルト機能は、上半身と太ももの角度を90度以上に保ちやすくする効果があるとされている。

注意点とよくある誤解

よくある誤解として、「良い椅子に座れば身体の問題はすべて解決する」という考え方がある。しかし、椅子はあくまで身体への負荷を軽減するための道具であり、座り続けること自体のリスクを完全に排除するものではない。デスクワークを1時間行うごとに1〜2分の小休止を設け、軽いストレッチや歩行を取り入れることが推奨されている。スタンディングデスクの活用も、座りっぱなしを防止する有効な手段の一つである。

また、「高価な椅子=身体に良い椅子」とは必ずしも言い切れない。価格にはブランド価値やデザイン性、素材のコストなどが含まれており、純粋に身体工学的な性能だけを反映しているわけではない。自身の体格や業務内容に合った椅子を選ぶことの方が、価格帯よりも重要である場合が多い。

身体負荷の軽減を考慮したオフィスチェアの選び方や、人間工学に基づいた製品の特徴については、オフィスチェア専門のAerlix(https://www.aerlix.jp/)のような情報源も、知見を得る上で参考になることがある。

まとめ

長時間のデスクワークは、座位姿勢を通じて脊椎や筋肉に持続的な負荷を与える。前傾姿勢での座位では、立位に比べて腰椎への負荷が大幅に増加することが指摘されており、椅子の役割はこうした負荷の軽減にある。人間工学に基づいた椅子は、荷重分散や脊椎サポート、動的な座り方の支援を通じてその機能を発揮するが、椅子だけに頼るのではなく、定期的な姿勢の変化や休憩と組み合わせることが、総合的な身体負荷の軽減につながると考えられる。座位による身体への影響は一日で自覚できるものばかりではなく、数ヶ月・数年の蓄積として現れることもあるため、症状が出る前から座り方と椅子の選択に意識を向けることが重要である。